「事業承継税制」が、スタートしたと報じられておりますが、どんな内容でしょうか?
今年の3月、平成21年度税制改正が成立し、3月31日公布されました。
今回の税制で「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予の特例」が創設されました。このことを指して「事業承継税制」がスタートしたと報じているわけです。
従来、「農地についての贈与税・相続税の納税猶予の特例」がありましたが、これを事業経営にも対象を拡大したと言えます。具体的には、事業経営(法人経営)の「非上場株式」について贈与税・相続税の「納税猶予」をしようという制度です。「納税猶予」といいますが実質、贈与税・相続税が軽減されます。このことを通じて「事業承継」がスムーズに行われることを目的に創設されました。
具体的にはどのような手続きになるのでしょうか?
手続きは「贈与税の納税猶予」と「相続税の納税猶予」にわかれますが、経営承継円滑化法の規定に基づく「経済産業大臣の認定」を受けて税務署への諸手続きとなり税が軽減されることになります。
なぜ、経済産業大臣かと不思議に思われるかもしれませんが、もともと「事業承継税制」は、経済産業省・中小企業庁の発議でスタートし、昨年先行して「経営承継円滑化法」成立おりました。今回の税制改正により、税制上のフォローがなされたわけです。
具体的には非上場株式の贈与・相続にあたって
- 計画的な承継にかかる「経済産業大臣の確認」の申請(ここで後継者確定等が行われる。)
- ついで、贈与・相続後「大臣認定」の申請
- 「大臣認定」を受けて、税務署に対し、贈与税・相続税の申告で納税猶予の手続きを行う。
手続きについて簡単に述べましたが「大臣確認」「大臣認定」「贈与税・相続税申告」の段階で諸々の適用用件が定められております。
- 先代経営者の要件(贈与者又は被相続人)
- 後継者の要件(受贈者または相続人)
- 認定会社の要件(対象となる非上場株式)
また、納税猶予を受けてから5年間の間の要件、5年経過後の要件等もあり要件をクリアできない場合「納税猶予となった税金を全額納付したり一部納付したりすることになります。適用要件もいろいろあるのでしょうがどの程度、税は軽減されるのですか。
贈与税・相続税の軽減額(納税猶予額)は特例の対象となる非上場株式等の評価額に対応した税額が軽減されることになります。 「贈与税」は贈与される財産がすべて非上場株式等である場合は全額「納税猶予」されますので0となります。「相続税」は相続される財産のうち非上場株式等である場合、その評価額の80%相当額の贈与税が「納税猶予」されますので20%相当額の相続税負担となります。
どのような会社の株式を適用したらよいのでしょうか?
まず自社の株式の評価額が高いことが「事業承継税制」を利用するかどうかの判断基準となります。実際のところ不透明な経済状況の中、5年間の事業継続要件等の適用要件をクリアできない場合も予想されます。その時点で「納税猶予」となった税と膨大な利子税がかかる制度ではどの程度利用できるか疑問が出てくるところです。このような状況の中で「事業承継税制」がスタートしたと理解しておくとよいでしょう。かなり複雑な手続きが必要ですので専門家と十分相談されるとよいでしょう。
税理士 浅沼正三